りゅうおうのおしごと 第七巻感想

りゅうおうのおしごと 第七巻 感想

この1月に発売されたりゅうおうのおしごと7巻の感想です。普通に面白い佳作だと思います。

あらすじ

シリーズのこれまでのあらすじは省略です。

今回は(も?)主人公はほぼストーリーに関係なくで、スポットライトがあてられたのは師匠の清滝九段になります。

テーマをあげるのならば「老い」になるでしょう。かつては将棋界の頂点の名人に二度挑んだこともある清滝九段ですが、年齢的な衰えには勝てずに力が衰えていっているのを当人も自覚しています。

その力の衰えを納得できずに、自分には理解できない若手に傲慢に接して、当人が忌み嫌っていた「老害」と言える存在に堕してしまいます。

そんな清滝九段に対して正面から論難して、非を悟らせたのが、伸び悩んでいるベテラン奨励会員の鏡洲三段です。

自らが情熱を失っていたことに気づいた清滝九段は、鏡洲三段に頭をさげて将棋の研究会をスタートさせます。

そして師匠と弟子は、それぞれの昇級と降級回避をかけて、師匠は若き世代の旗手と、弟子は棋界最年長の大ベテランとの戦いに挑みます。

起承ストーリー

やはりこのシリーズは5巻で一区切りがついたシリーズだと思います。主人公の努力・勝利という面では5巻以上のカタルシスを紡ぎだすのは難しいと思います。

なのでかどうかはわかりませんが、前巻の6巻では姉弟子を主役にして奨励会での戦いをテーマにして、主人公の動向や主人公の弟子の動向はその脇で多少語られている程度でした。

この巻でもそれは変わりません。主役格は師匠であり、主人公の戦いは終盤で描かれていますが、師匠の戦いの前哨戦的なポジションです。

前巻で出てきた、鏡洲三段や椚三段、蔵王先生が割と重要なポジションで活躍しています。前巻から引き続きですが、各登場人物にスポットライトをあてつつ、この後のストーリー展開に欠かせぬ人物を登場させている巻だとおもいます。

起承転結でいうならば、起承の部分を担っているのがこの6・7巻でしょう。今後の7巻8巻に続いていきそうな伏線をビシバシと張っています。

今後の展開予測

このあとで間違いなく描かれるだろう物は…
★姉弟子・鏡洲・椚(現二段?)の奨励会ストーリー
★天衣と姉弟子の女流タイトル戦
★八一の三期目をかけての竜王防衛戦

ここでは触れませんが、商業ライトノベルですから、当然ながら八一のハーレム恋愛物語や、エロ萌えも描かれます。

ただそれを除外して考えると意外なぐらいに、主人公八一の戦いで今後描かれるであろうものはないんですよね。より正確に言うならば、5巻の物語を超えるような戦いの舞台はないのではないでしょうか。

さらに言うならば、ヒロイン格のあいの戦いの舞台はまだ整備されていません。

おそらく今後の作品世界では、この主人公とあいの戦いの舞台を設置する展開をサブ的に描きながら、姉弟子の三段リーグでの戦いが描かれるのではないでしょうか。

元ネタ指摘など

矢倉は終わった

将棋の純文学と言われて、人気が高い伝統的な居飛車の戦法が矢倉…この戦法をもう古いと切って捨てた発言ですが、現実では若手棋士の増田五段のセリフです。http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-6937.html

カチンとくる人は来た模様です。ちなみに最近の増田五段は雁木も終わったと言っている模様です。
http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-7455.html

清滝道場

ベテランの清滝九段が若手に頭を下げてはじめた道場ですが、これはおそらく故米長棋聖の米長道場が元ネタです。
当時若手である森下(先述の増田の師匠)などから序盤戦術を学び取り、それが翌年の名人就位に結び付いたとのことです。

蔵王先生

大ベテラン棋士で、関西の帝王とされる存在ですが、これの元ネタはわかりやすいです、内藤国男九段がモデルです。歌に詰将棋が有名ですね。

オッサン流振り飛車破り

師匠対神鍋戦で師匠のぽかの後の人が変わったような指しっぷりですが、言葉の節々にこの本を意識ししています。

著者は藤井四段が更新するまでの連勝記録を持っていたので有名なお方です。

白鳥先生へ

細かい所の重箱のすみつつきですいません。P80ですが「…野田から阪神線で10分足らずの場所に」難波はありません。

ついでに言うならばJR野田駅と野田阪神駅は徒歩10分ぐらい離れています。師匠の家はJR野田駅の近郊との事でした。

なので、この辺を矛盾なく収めるためには…

「師匠の家はJR野田駅近郊、住所で言うならば野田5・6丁目辺りにある。」

「八一たちは師匠の家がある(行政区分上の住所の)野田(5丁目か6丁目辺り)から阪神西九条駅まで歩いていき、そこから阪神難波線で難波まで行った。」

…という設定にしておけば良いと愚考します。

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