読書感想文3 りゅうおうのおしごとを読んで

竜王のお仕事は2015年からリリースされている白鳥士郎作のライトノベルです。二年連続で「このライトノベルがすごい」大賞にも輝いており、2018年1月からはアニメも始まる今一番旬な作品ですが、これを福島区と将棋には詳しいかんなわが語ります。

りゅうおうのおしごとってどんな作品

りゅうおうのおしごとの概要

16歳で将棋界の頂点である竜王位についた中学生棋士の九頭竜八一が主人公です。
才能があり若くてして結果を残しはしたが、精神的な成長は未熟で行き詰まりを感じていたのが物語のスタートです。

そこにヒロインの愛ちゃん(小学生女子)がおしかけ弟子としてあらわれて、物語が前に進んでいきます。

将棋をテーマにした娯楽用ライトノベルですから、エロや萌えは全面に押し出されてプッシュされています。ロリロリなJSにツンデレJC、大人な魅力のお姉さんと萌え業界のテンプレ通りによりどりみどりの女性キャラもこの作品の魅力です。

リアルな描写が魅力

ラノベというと馬鹿にされがちですが、作者がしっかりとした取材をして作品を書いているのは伝わってきます。関西将棋会館1Fのレストランツゥェルブというのは笑っちゃいました。実際にあるのはイレブンです。

実際の将棋のシーンは棋譜などは無く、言葉だけで進められていきます。そのために「将棋」作品としての魅力はハチワンダイバーに比べると落ちます。それでも相懸かりの終盤戦が玉と王が接近し合う戦いになるとか、振り飛車の捌きなど、将棋の楽しみの描写は良く出来ています。

駒の動かし方程度は知っている層から、ハードな将棋ファンまでを納得させる筆力はある作品です。

登場人物の魅力

登場人物は作者の脳内で生み出された部分と、将棋界の人物を下敷きにして描かれている部分が融合して出来ています。

主人公は4代目中学生棋士の渡辺明棋王、ライバルの歩夢きゅんは佐藤天彦名人。姉弟子は里見姉(と思わせて加藤桃子)、月光会長は谷川九段で生石玉将は久保王将……実在人物の特徴をデフォルメしてキャラの肉付けをしています。

しかしなんと言っても白眉のキャラは「名人」

それでも一番魅力的なキャラはラスボスの「名人」です。物語の初期からその後ろ姿は描かれていましたが、具体的な描写はされていません。なんせキャラの名前すら無く、「名人」という名前でしか呼ばれていません。

会話や姿形の描写さえほとんどされず、ただその姿や立ち居振る舞いを遠景からの描写に抑え、他の登場人物の行動から、その存在感を語られています。

そんな間接照明で照らされた「名人」の姿が、相対する主人公の目を通して直接描かれるのが5巻の終盤です。そこで主人公は憧れていた名人が、格好良くも無く疲れの見える姿で一心不乱に指し手に苦悩する姿を目にします。

無精ひげすら見えるその姿を見て、主人公は「かっこいい、純粋にそう思」います。
ラスボスの描写でこういった作品は見たことが無く、この表現の仕方はキャラを魅力的にしていました。

参考リンク:飽きもせず、倦みもせず、弛むこともなく全身全霊で戦い続けた一人の男

奇数巻が面白い傾向あり

そんなりゅうおうのおしごとですが、奇数巻が面白い傾向にあります。
物語の始まりたる1巻に、作者が本当に書きたかったという3巻。私は3巻をとても面白く思ったのですが、「名人」が出てくる5巻はそれ以上の面白さでした。

物語はまだまだ続きますし、この一月には最新の7巻も発売になりアニメ化もされます。それだけでも旬な作品ですが、それ以上に永世七冠がリアルに誕生したのに即時性を感じます。
ラノベファンや将棋ファン、面白い作品が読みたい人にお勧めの作品です。

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